名品コレクションからなる世間一般の博物館では、展示方法において展示品自体の価値が強調される傾向があります。しかし史語所が所蔵する文化財には、資料そのものの価値もさることながら、その一点一点に収蔵に至るまでのさまざまな歴史や物語が秘められている点を無視することはできません。そこで当館の展示方式を計画するにあたって、世間一般の博物館のような名品コレクションを並べる方法とは一線を画し、ご来館の皆さまを文化財がつくられた当時の世界にご案内し、文化財にこめられたさまざまな歴史や物語に触れていただけることを目標といたしました。

以上のコンセプトを実現させるため、当館は史語所の研究理念である「新学術」精神に基づき、これまでの研究成果と各資料の性質にふさわしい展示方式を採用いたしました。一階の考古空間は時代別展示とし、新石器時代の龍山文化から始まり、殷、西周、春秋戦国時代までの遺跡から出土した資料を系統的に展示しております。二階の歴史空間は文献資料など史料の種類別展示とし、居延漢簡、珍蔵図書、内閣大庫檔案、中国西南民族の民族衣装や工芸品、西周時代から宋代に至るまでの拓本資料、台湾史関連資料という六つのコーナーから構成されています。各展示室における解説文はすべて史語所の各分野における専門の研究員が担当しており、それぞれの資料にまつわる歴史的背景や文化的意義をわかりやすく解説しております。ご観覧の順路は二階ロビーから始まります。このロビーは各展示コーナーへと続いており、それぞれの展示コーナーは独立しつつお互いに連続している構造になっています。

二階では展示コーナーごとに導入解説スペースがあり、まずここで資料の収蔵経過とその学術的価値を知ることができます。それから吹き抜け空間にかかるガラス製の橋を渡ると、実際の資料展示スペースに入れるようになっています。

二階の床に張られた透明ガラスと、二階から一階へと階段で降りる動線構造は、一階の考古空間に移動するときに地底にもぐりこむような気分になるよう設計されています。一階の展示空間にはガラスの壁で囲まれた通路が空間の中心を貫いていますが、この通路は時間の流れを抽象的に表したもので、この通路によって各展示コーナーがつながる構造になっています。当館の建物は柱の多い構造のため、当初は展示構成に制約をもたらすことが問題となっていましたが、現在ではその構造をむしろ積極的に利用して、展示構成の時代区分に活用しています。考古空間の各展示コーナーでは、遺跡ごとに墓葬の写真や発掘作業時の写真を展示していますが、なんといっても最大の見所は、墓葬の発掘によって出土した資料をすべて展示したことによって、考古学調査の成果を皆さまご自身の目で確認できるところでしょう。