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館について

館の歴史

受け継がれる学究精神

1928年に歴史語言研究所(史語所)を設立した初代所長傅斯年は、史語所の卓越した組織力と研究能力を背景に1933年、中央博物院籌備処(設立準備委員会)を設置しました。傅所長は博物館の設立の目的を国民の教育に定め、国民の基礎的教養の向上と文化方面への関心を高めることを目指したのです。傅所長の思い描く博物館は自然史博物館としての性格が強いもので、ただ骨董を収蔵し、展示するのみの博物館とは明らかに一線を画していました。

日中戦争前から戦後に至るまでの十数年間、史語所と中央博物院籌備処との関係は一層緊密なものとなり、この時期には大陸において両機関合同での考古学発掘調査や民族学調査が多数行なわれました。国共内戦後の史語所の台湾移転に伴い、1949年に中央博物院籌備処は北平故宮博物院と合併し、「国立中央・故宮博物院聯合管理処」という組織になりました。この「国立中央・故宮博物院聯合管理処」はさらに1965年には「国立故宮博物院」に再編され、傅所長が夢見た中央博物院の名はここに姿を消すことになったのです。

しかし、傅所長の夢はここで終わったわけではありませんでした。1958年に落成した史語所考古館の一角には考古陳列室が一室設けられ、1986年にオープンした歴史文物陳列館では一、二階部分が展示フロアとして公開され、博物館としての基礎的な体裁が整えられました。そして2002年6月、歴史文物陳列館は改装を経てリニューアルオープンしました。ここに至ってようやく、傅所長による中央博物院設立の構想は、氏の本拠地であった史語所において、歴史学・考古学・民族学的視点から市民教育に貢献する歴史文物陳列館として実現したのです。

当館所蔵の文化財は、それ自体が歴史的・文化的・考古学的に非常に高い資料的価値を備えているだけでなく、史語所設立以来八十年の歴史と、近代中国における学術発展の歴史を体現しているという点において、他の芸術博物館収集資料とは大きく性格を異にしています。

知識社会における新たな位置づけ

私ども史語所が創立以来ずっと守ってきた研究方針の原則は、研究者は自分の狭い書斎に閉じこもるばかりではいけない、ということです。初代所長傅斯年は「空の果てから地の底まで 自ら訪ね歩いて調べよ(上窮碧落下黄泉、動手動脚找東西)」という格言を残しましたが、歴史学研究において最も重要なこととは、まさにこの格言の通り、一次資料(最も重要な資料)の収集と研究であると言えるでしょう。このような典拠を重んじ真理を追求する研究理念こそが史語所の伝統精神であり、そしてこの歴史文物陳列館の展示内容こそがその伝統精神のもとで営々と積み重ねられた研究の成果なのです。

グローバル化の進むこの21世紀においては、知識とは象牙の塔にしまいこまれた宝物ではなく、社会のあらゆる階層に向かって開かれた存在にならねばなりません。今後は皆さまの議論のきっかけになったり、想像力をかきたてたり、未来を思い描くときの助けとしての役割が求められていくことでしょう。このような時勢を鑑み、知識の体系と皆さまとの間の架け橋となり、これまでの研究成果の伝承と未来に向けての新たな挑戦を続けていくのが当館の今後の使命と考えております。また、皆さまからの貴重なご意見を今後の活動の改善に生かせるようつとめてまいります。

学術博物館に向けての新たな道のり

新しい時代における社会からの要求にこたえるべく、当館は1997年に一旦閉館し全面改装に入り、展示計画も全面的に見直すことになりました。これと同時に収蔵庫の環境改善にも着手し、青銅器など有機物でできている文化財の保存のため、恒温恒湿機能を備えた収蔵室を二室あらたに設置しました。1994年には文化財保存実験室が成立し、文化財の研究や保存・管理に対し責任を果たせるようになりました。さらに、展示や教育普及などの機能を有効に発揮できるよう人材の適切な配置を心がけ、当館を専門博物館として運営していけるよう方向転換を目指しました。現在の当館の収蔵管理事業の重点といたしましては、所蔵する大陸の中原地区の考古資料を改めて整理し直すことと、行政院国家科学委員会主導の「デジタルアーカイブプロジェクト」の一環としての、文化財の画像やデータのデジタル化が挙げられます。当館は2002年のリニューアルオープン以後は所蔵資料の常設展示を主軸としつつ、毎年小規模な特別展示とそれに伴う教育普及活動を展開し、史語所での長年にわたる研究成果を社会に還元できるようつとめております。

研究活動と博物館運営の並立は相互補完の関係にある、と傅所長が史語所設立の初期に唱えた通り、学術研究に勤しむだけでなく教育の普及や文化の向上に対しても社会的責任を果たす、というのが史語所が長年にわたって貫いてきた姿勢です。歴史文物陳列館は史語所の研究成果を展示する場ではありますが、単に学術研究の材料として貴重な文化財を並べるだけでなく、ご来館の皆さまに楽しみながら知識を深めていただき、皆さまに学術に対する理解と興味をお持ちいただき、科学と文化の進歩に貢献する場として皆さまのお役に立てることを願っております。 

コレクション フィーチ

史語所が所蔵する資料は、伝統的な文人や趣味人、あるいは世間一般の美術館や博物館が収集する名品コレクションとは違い、純粋に学術研究の対象として収集されたもので構成されています。これらの所蔵資料は主に現地での野外調査を経て収集されたもので、史語所の台湾移転以前に中国大陸で収集したものと、台湾移転後に台湾国内において収集したものの二系統に大別されます。

所蔵資料を材料別に見ると、石器、骨器、貝製品、土器・陶器、玉器、青銅器などの器物資料と、竹製・木製の簡牘資料と、紙製の檔案(公文書)や図書資料が挙げられます。時代別に見ると、古くは旧石器時代から、新しいところでは明代、清代はもちろん近現代にまでわたります。地域別に見ると、遠くはヨーロッパ、近くは台湾と多岐にわたりますが、大部分は中国大陸からの資料で構成されています。

これら所蔵資料の中で、図書資料と金石拓本資料が本所附属の傅斯年図書館に、明清時代の内閣檔案が明清檔案工作室に収蔵されているのを除き、残りの十四余万件の資料は全て当館が収蔵しております。資料の内わけは次の通りです。
 
  • 史語所が台湾移転以前に中国大陸で発掘した考古遺物:計十万余点。中でも河南省安陽の殷墟遺跡の出土遺物は所蔵資料全体の約70%を占めています。その他にも、河南省の濬県辛村、輝県琉璃閣、汲県山彪鎮;山東省の済南城子崖、日照両城鎮;甘粛省の敦煌仏爺廟、武威喇嘛湾及び民勤三角城などの遺跡からの出土遺物があります。
  • 19世紀のフランスの考古学者モルティエ(Mortillet)父子旧蔵のヨーロッパの旧石器:七千余点。
  • 初代所長傅斯年が北京で購入した殷周時代の青銅器。
  • 居延漢簡:一万三千余点。
  • 中国大陸の民族学関連資料:約一千余点。

展示アイデア

名品コレクションからなる世間一般の博物館では、展示方法において展示品自体の価値が強調される傾向があります。しかし史語所が所蔵する文化財には、資料そのものの価値もさることながら、その一点一点に収蔵に至るまでのさまざまな歴史や物語が秘められている点を無視することはできません。そこで当館の展示方式を計画するにあたって、世間一般の博物館のような名品コレクションを並べる方法とは一線を画し、ご来館の皆さまを文化財がつくられた当時の世界にご案内し、文化財にこめられたさまざまな歴史や物語に触れていただけることを目標といたしました。

以上のコンセプトを実現させるため、当館は史語所の研究理念である「新学術」精神に基づき、これまでの研究成果と各資料の性質にふさわしい展示方式を採用いたしました。一階の考古空間は時代別展示とし、新石器時代の龍山文化から始まり、殷、西周、春秋戦国時代までの遺跡から出土した資料を系統的に展示しております。二階の歴史空間は文献資料など史料の種類別展示とし、居延漢簡、珍蔵図書、内閣大庫檔案、中国西南民族の民族衣装や工芸品、西周時代から宋代に至るまでの拓本資料、台湾史関連資料という六つのコーナーから構成されています。各展示室における解説文はすべて史語所の各分野における専門の研究員が担当しており、それぞれの資料にまつわる歴史的背景や文化的意義をわかりやすく解説しております。ご観覧の順路は二階ロビーから始まります。このロビーは各展示コーナーへと続いており、それぞれの展示コーナーは独立しつつお互いに連続している構造になっています。

二階では展示コーナーごとに導入解説スペースがあり、まずここで資料の収蔵経過とその学術的価値を知ることができます。それから吹き抜け空間にかかるガラス製の橋を渡ると、実際の資料展示スペースに入れるようになっています。

二階の床に張られた透明ガラスと、二階から一階へと階段で降りる動線構造は、一階の考古空間に移動するときに地底にもぐりこむような気分になるよう設計されています。一階の展示空間にはガラスの壁で囲まれた通路が空間の中心を貫いていますが、この通路は時間の流れを抽象的に表したもので、この通路によって各展示コーナーがつながる構造になっています。当館の建物は柱の多い構造のため、当初は展示構成に制約をもたらすことが問題となっていましたが、現在ではその構造をむしろ積極的に利用して、展示構成の時代区分に活用しています。考古空間の各展示コーナーでは、遺跡ごとに墓葬の写真や発掘作業時の写真を展示していますが、なんといっても最大の見所は、墓葬の発掘によって出土した資料をすべて展示したことによって、考古学調査の成果を皆さまご自身の目で確認できるところでしょう。

館のチーム

ディレクター

黃銘崇 Huang, Ming-Chung

教育振興

王家瑋 Wang, Chia-Wei
王任君 Wang, Jen-Chun

展覧企画

林明信 Lin, Ming-Hsin
丁瑞茂 Ting, Jui-Mao
黃睿文 Huang, Jui-Wen

展示運営

鄭智文 Cheng, Chih-Wen